小路に咲いた小さな花
「敬ちゃんって、絶対に空気読まないよね」

「いや。俺はましな方。もっと変なのがいるから」

敬ちゃん、空気読んでいない自覚はあるんだ。

「敬ちゃん以上に空気読まない人って誰」

「会ったことあるでしょ。葛西」

葛西さん。

……ああ、飲み会で会った、あの眼鏡男子。

あまり話さなかったから解らないや。

「あれに比べたら、俺は空気を読む方だよ」

「そうなんだ」

「たぶん」

たぶんなのか。

思いながら、おちょこを口につけて……眉をしかめる。

……うん。

甘くないし、お酒の臭いすごい。

口に含むと広がる味は摩訶不思議。

飲み込むと胃の方から暑くなるような感じ。

だけど背中はぞくぞくするような。

「ほら。強いって言ったじゃん」

「お、お酒は甘いのがいいね」

「カクテル系だろうね。でも、甘いからって飲みすぎると、この間みたいになるから注意ね」

まぁ、具合悪くなりたい人はいないだろうから、敬ちゃんの言う通り、少しくらいなら飲めるって解っただけいいか。

飲めたら楽しいんだろうな、とは思うけど……

「私は甘酒でいいかなぁ」

「砂糖たくさんいれて?」

「……甘党だからね」

「餌付けしてたしね」

「…………」

今、サラッと何て言った!?

「ちょっと聞き捨てならないことを聞いたような気がする」

軽く睨むと、敬ちゃんは軽く笑いながら眉を上げた。

「捨てられないなら、聞き流すと言う方法があるから」

「流さないし、餌付けされてないし」

「そうそう、してないしてない」

「敬ちゃん……」

「うん?」

「そーゆーところが嫌い」

何だか意味不明な事を言うし、人が真剣に反応したら茶化したりはぐらかしたり……

「彩菜は嫌い?」

「き、嫌い」

「じゃ、明日はデートしよう」

ワケ解らないけど!

「どうしてそうなるの!」

「いや。嫌われてるなら、お近づきにならなくちゃね?」

ある意味では正論だ。
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