小路に咲いた小さな花
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*****




どうしたのかな敬介さん。

私の聞き間違えかな。

桜は人を惑わすとか、そんな言い伝えあったかな。

あったかもしれない。

いや、どうだろう。

何故か何事も無かったかのように、原っぱにレジャーシートを広げている敬介を眺め、ぼんやりと用意がいいなと思った。

そうだね。ピクニックにはレジャーシートは必須だよね。

忘れてたわ。

「彩菜。とりあえず座ろうか」

敬介に言われて、レジャーシートに座ると、お弁当いりのバックを渡された。

「俺のより重かった。何がそんなに入ってるの?」

「あ。うん。おにぎり6個とお味噌汁いり水筒と、玉子焼きと……」

……って、

「そうじゃないでしょ! いきなり何を言うの! 何でそんな一大事な事をさらっと言えちゃうの!」

「別にいきなりでもない」

「いきなりとしか思えないよ。だって、私たちは付き合い始めてまだ半年も経ってないじゃない。そういう事って、結構付き合いの長い男女の話じゃないの?」

「それはどうだろう? とりあえず彩菜」

「はい?」

「俺は少し腹減った」

ニッコリ言われて、バックを開けた。

敬介のこういうところが手に負えないと言うか。

ご飯とか、大切?

今、この時に大切?

解らないけど、水筒からプラスチックのマグに味噌汁を注いで渡し、アルミホイルに包まれたおにぎりを並べると、おかずの入った重箱を開けた。

「どうぞ」

「どうも」

一番最初にお味噌汁を飲み、それから玉子焼きを食べて、やっぱり敬介はニッコリ笑う。

「まぁ……付き合いの長さなら、あれじゃない? 俺達はかなり長いと思うんだけど」

「幼馴染みとしての期間でしょ。恋人として、そういった期間の長さを言っているの、私は!」

「いずれにしても、遅かれ早かれそのつもりなんだから、今だっていいわけじゃない?」

「遅かれ早かれって……どうなるか解らないじゃない。先の事なんて……」

敬介の冷たい視線を受けて黙り混む。

「……えっと」

「別れるかも知れないとか、そういう世迷い言を言うつもりなら却下。だいたいね、彩菜は俺のなの。それは解ってる?」

え。いや。あの……

私は私のものですが。

「それに、いきなりでもなんでもない。結構、俺なりに考えたし」

「え。いや……でも」

「ちゃんと言おうと思ったのは、昨日だけど」

それはどういう事だろう?

昨日、昨日はカレーライスを食べて笑われた記憶しかない。

カレーライスに原因があるとは思えない。

その他は、庶民的だねって話をした記憶があるけど、うろ覚えだ。

昨日、何かきっかけがあった?
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