幻恋
ぎょっとしながらも、ゆっくりと目を開けてみた。
えっ…! そこには、信じられない人が立っていた。
「…寧人?」
「あっ、バ、バカッ!
なんて目で見てんだよ!?」
「…えっ?」
変な声を出してしまった。
寧人は、まるで呆れたかのように、大きな溜め息を付いて私を見下ろした。
「そんな目で見られると、さすがの俺もかなり傷付くんだけど」
「…私……」
どうやら、私は汚い物でも見るかのような目で、寧人を見ていたらしい。
それは………ごめん、寧人。
「…ハハッ。
でも、ドジなのはちっちゃい頃からずっと変わんないんだな」
「…えっ!
私は、もうドジなんかじゃないよ!
それに、寧人にはもう関係…きゃっ!」
「危ない!」
私と来たら、あんな事言っといて、早速近くにあった大きい木の根っこに足を引っ掛けちゃった。
…って、あれ?
なのに……痛く、無い。
まさか……はっと振り返った頃にはもう遅く、私を助けようとして軽々とお姫様抱っこしている寧人がいた。
「…嫌っ……寧人、止めてっ!
……んんっ!」
止めてと言おうとした瞬間、その時。