幻恋
寧人に抱き締められて…締める力はどんどん強くなっていき…
そして…私も私で、それを振り払ったり、抵抗したりはしなかった。
…私、どうしちゃったんだろう?
「…寧、人……っ」
「…なぁ、春華…」
久々に、寧人に名前を呼ばれて、ちょっとドキッとした。
「あれは、誤解なんだよ」
「…えっ?」
誤解?
あの浮気の事?
「…今さら、何言ってるの?」
今さら、あの浮気が誤解って、全て帳消しにするつもりなの?
「…あのさ、あれは本当に違うんだ。
あれは、美浜(ミハマ)が俺に………」
美浜? その美浜って人が、寧人が浮気してた、あの人の事?
美浜って、確か……
美浜衿(エリ)。
私は同じクラスになった事は無いけど、三年生の時に、寧人と同じクラスだった女の子で、明るい茶髪に染めたアップに結い上げた髪がとても目立つ派手めな子だけど、本当の性格は正直よくわからない。
つまり…美浜衿……美浜さん。
「美浜さんが、何かしたの?」
「まぁ、そんな感じ。
そこんとこは、本当に誤解だし、俺は別にアイツの事何とも思ってないし、告白もされたけど、断った」
「…」