溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

「ありがとう。では、そろそろナホと二人っきりにしてもらってもいいかな」
「ふ。畏まりました」

一瞬、噴き出しかけた彼はすぐに仕事の顔になるとそのまま流れるように部屋から出て行った。

「あんな若いのに、コンシェルジュのお仕事も落ちついてましたね」
「笑おうとしていたがな。俺はクル―の教育にも手を抜かない。何があっても一人ひとり、頼りがいがある自慢のクル―だ。それより」

ジェイドさんは椅子を寄せると、私の寝癖だらけの髪を撫でた。

「おはようも、おはようのキスもなく俺より先に起きてしまうなんて。キミはなんて悪い子なんだ」
「や、無駄に甘い声で囁かないでください」

「起きてキミが隣に居ない寂しさときたら。キミには分からないのか」

「ちょっと、分かりたくないです」

朝からその甘ったるいは胸やけしそうだもん。

低血圧なのか朝は弱いし、フルーツとか軽いものしか食べない癖にこの、無駄にセクシーなフェロモンは何処から出てくるんだろう。
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