溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

「だから、なんとか寝かしつけた後、シャワーを浴びた俺がキミのベットに潜りこむぐらいのご褒美があっても良いと思ったのだ」
「――!? 全然良くないです、潜りこんだってそんな」
「大丈夫。まだ何も奪ってないよ」

だから、貴方の声で『まだ』とか意味深な言葉を言うのは止めて下さいってば。

「この船に居る間は、俺の婚約者なのだから少しぐらいの我儘も失敗も可愛いぐらいで気にすることはないよ」

そう言うと、腰を引き寄せられた。
翡翠色の瞳がぐいぐいと近づいてきて、思わずまた視線を逸らすことも目を閉じることも出来なかった。

「うん。慌てるキミも、シーツに包まるキミも可愛いな」
「ちょっと、顔が近いです」
「そうか。昨日の褒美にキスしてくれたら離れるかもしれないよ」

にやにやと更に腰を強く引き寄せる。
逃げようと身を捩ると、包んでいたシーツを足で踏まれていたようで動けない上に暴れると下に落ちてしまう。
じりじりと距離が近づいてきて、流されてしまいそうになる。

「駄目です、そのキスは」
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