怪盗ダイアモンド

阿弓side





【阿弓side】


新月の夜、博物館の『血の口紅(ブラッドルージュ)』が置いてある展示室。

警察と協力して日本の犯罪などから宝や人の命を護る少年少女の秘密組織、『TGG』のスタッフとしてこの博物館に来た私、阿弓は仲間たちと警護に回っていた。

この団体は、世間には秘密にされてて、基本的に警察関係の人間しか知られてはいけないことになってる。

だから私がこんな仕事をしてることは、親友である蝶羽と亜希乃にも秘密。


そして今の私は警備員に化けている。

本職の警備員の男性たちの中に紛れても違和感が無いように、シークレットブーツを履いてるから、ちょっと違和感がある。

たくさんの客達の中にアッキー(亜希乃)もいるから、彼女にも正体がばれないように仕事用の暗視仕様のゴーグル風の眼鏡と、普段より高い位置にしてしっかりと結んだポニーテールで顔周辺も軽く変装。

おっと、男性の中に紛れてるのにポニーテールじゃ逆に目立つか。

ウエストポーチから出した帽子の中に、結んだ髪を押し込んだ。これで良し。

帽子のつばをポンと叩き、気合いを入れた。

警備員達がぐるりと囲うように『血の口紅(ブラッドルージュ)』と観客を見張ってる。

その上、壁には十三歳にして大学生以上の頭脳を持つTGGリーダー、日ノ宮 愛李(ひのみや あいり)が作った捕獲用の檻や網が設置されている。

こんな中で盗むなんて、魔法使いじゃない限り出来ないだろう。

「ねぇアユさん〜、本当に大丈夫なのぉ?」

「ああ、アサヒか。警備員と一般客が話してたらおかしいから、手短にしてよ。用件は?」

私の仲間、TGGメンバーの志川 朝妃(しかわ あさひ)、通称アサヒが話しかけてきた。

まだ中学三年生で子供のため、彼女を含めた他の中学生メンバーは、私服着用で一般客に紛れつつ宝石を守ってる。

「アユさんのお友達ぃ、ここにいるんでしょ〜?」

「アッキーとアゲハ嬢のこと?アッキーはいるけど、アゲハ嬢は急用出来たらしくていないよ。アッキーはアホだし、私は仕事着にこの変装してるから簡単にはバレないだろ」

亜希乃は相変わらず展示品やイケメン警備員を見ていて、私とは目も合わない。

親友として、ここまで気が付かれないのもちょっと複雑な心境なんだけど。



「零時まで、あと十秒……」

TGGメンバーの一人、朝妃同様一般客に紛れたユーリこと皇 夕璃(すめらぎ ゆうり)が、腕時計を見ながら、展示室にいる全員に聞こえるように、マイク越しによく響く声でカウントを始める。

偶然にも、彼女はこの博物館の館長の孫娘でもあるから、こういうことをよくしていて、常連客から見ても違和感が無いらしい。





「九、八、七、六、五、四、三、二、一……」










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