怪盗ダイアモンド

音遠side






【音遠side】




某大学敷地内某所。





―――カツン、カツン、カツン……


地下へと続く螺旋階段を降りていく。

照明が絞られてて薄暗い。

壁も階段も全部黒に近い灰色だから、黒い霧の中に入ってしまったような気分になる。

右手には資料の挟まったバインダーを抱くように持ち、左手には未開封の缶のココアを指先で持っている。

両手が塞がって手すりに手をつけられないから、それらを落とさないように、慎重に歩を進める。

早く来てって言われたから、本当は早く駆け下りたいとこだけど、そんなことしたら転んで滑り落ちてお陀仏になっちゃう。

命が惜しいし、死んだらあいつにも会えないから、こうやってゆっくり進んでるんだ。


―――カツン、カツン、カツン……


自分の足音だけが、螺旋階段に不気味に響く。普通の人だったら、悲鳴をあげて逃げ出しそうだけど、僕はもう慣れた。

大切な人がいるから、行かなくちゃいけないからね。

「まぁ、死んでないと良いんだけど」


―――カツン。


呟くと同時に最後の一段を降り、僕は魔法陣のような模様が書かれた、いかにも近代的でデジタルって感じのドアの前に立った。

ふぅ、と息を吐き、大きく息を吸ってドアの向こうに向けて声を出す。

「おーい、生きてるー?」


―――しーん。


「死んでんのかー?」


―――しーん。


返事無し。

……まぁ、死んでたら返事出来ないか。

仕方ない。生存確認しに行きますか。

一旦両手の荷物を足元に置き、ドア横の壁にあるキーボードを打つ。

(えーっと、パスワードは……)

カタカタと、十桁のパスワードを打ち込む。



ピコン、ピコン、ピピーン!

『指紋、パスワード、共に承認。会員No.00、日ノ宮 音遠さん、お入り下さい』

機会の声が上から降ってきて、ドアがシャーっと横に開いた。

足元の荷物を持ち直し、僕は中へと進んだ。



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