君と花を愛でながら
全面ガラス張りの向こうはロールカーテンが降ろされていて、中の様子は見えにくい。
まだ開店前の時間帯だから、扉の前にかかっているプレートは当然『close』のままだ。
ちゃんと、連絡してから来るべきだったかも。
この扉にまだ鍵がかかっていたらどうしよう。
一瀬さんが、まだ店に降りていなかったらどうしよう。
他の店員さんが、もう来ていたらどうしよう。
だけど、私はずっと、再びこの店を訪れる時はこの時間だと、決めていた。
緊張で震える手で、扉を押した。
何かにつっかえることもなく、難なく開く扉の頭上でカウベルが鳴る。
店内からふわりと漂う珈琲の香りに、泣きたくなるくらいの懐かしさが胸を締め付けた。