君と花を愛でながら
「あはは……大丈夫、です。ほんとに、ただ心配してくれてるだけだから」


笑ってそう言っても片山さんは納得した様子は見せてくれなくて、私は仕方なくあの二人が心配性になっている理由を話した。


「私、大学受験失敗した後、ずっと引きこもって心配かけたから。それが急に外に出てフルでバイト入ったりしてるから、ハラハラしてるんだと思います」
「え、綾ちゃん引きこもりだったんだ?」
「引きこもり、っていうか……なんか、先行き見失ったら急に無気力になっちゃって」


結局は自分が子供で甘えてたことが原因だから……そう思うと情けなくて恥ずかしくて顔が熱くなってきた。
けど、このままじゃ悠くんやお姉ちゃんがすっかり誤解されてしまう。


「へー、意外……」


と言いながらマジマジと私を見る片山さんの視線に耐えていると、一瀬さんが三人分の珈琲を入れ終えて話に加わった。


「思春期にはよくあるそうですよ」
「そうなんですか?」

「特に周囲から伺い知れる部分では何の原因も見えず、急に不登校になったりすることも。感受性の強い人ほど、陥りやすいそうです」
「そっか……よくあることなんだ……」


一瀬さんの言葉で、まるで拍子抜けしたみたいに気が軽くなったのを感じた。
何だか、自分だけが精神的にひ弱で甘えてるのかと、そんな気がしていたから。


その時、カウベルがコロンと鳴って来客を知らせた。慌ててカップを置いて入口に目を向けると、よく見知った人が私に向かってひらひらと手を振った。
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