優しい彼は残酷な人。




静寂を取り戻した部屋のなか、彼は言った。


私の方を見ず、天井を見つめながら。


「俺、結婚することになった。」


「....え?」


「...彼女に子どもができた。」


今もなお、一点を見つめて彼は言う。


「彼女のことも嫌いじゃなかったし、何より新しい命を守っていかなきゃいけないと思うんだ。
だから俺、これからはきちんとしようと思って。」


「....」


「...今日でおわりにしよう。」


そう静かに朔は言った。


「....やだ....やだよ、結婚したって子どもがいたって構わないよ?私はいつだって後回しでいいし、都合のいいときだけでいいから。だから、これからも会おうよ!ねぇ?私達は...私達はそんなんじゃないじゃん。」


私は朔を繋ぎ止めておきたくて、必死に言う。



「....沙羅」


だけど


そう私の名前を呼ぶ朔は、意志のある瞳をしていた。


もう、朔は二度と私と会う気はないということ。




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