純情喫茶―恋する喫茶店―
コーヒーとカップの破片が辺りに飛び散っているうえに、玲奈の手はコーヒーと血で汚れていた。

当の玲奈は事態が読めていないのか、キョトンとしていた。

谷木は谷木で、その状況を唖然と見ていた。

「大丈夫!?」

笙は血だらけの玲奈の手を取ると、手の傷を確認した。

「傷はそんなに深くないな。

すぐに救急箱を持ってくるから、動いちゃダメだよ!」

笙は奥の方に行った。

彼が行っても、玲奈は放心状態だった。

「…大丈夫か?」

谷木が声をかけてきた。

「――えっ…あ、はい…」

玲奈は返事をすると、自分の手を見つめた。

「手、見せてくれる?」

谷木に言われ、玲奈は手を差し出した。

差し出された手に谷木は舌を出し、ペロッと舐めた。

「――ッ…!?」

慌てて玲奈は手を引っ込めようとしたが、それに気づいた谷木が手をつかんだ。

「な、何するんですか!?」

突然のことに、玲奈は戸惑いを隠せない。
< 50 / 117 >

この作品をシェア

pagetop