純情喫茶―恋する喫茶店―
「あんなことを言ってもいいの?」

谷木の姿が見えなくなると、玲奈は笙に聞いた。

ピクリと眉をひそめて訝しげに自分たちを見た谷木の顔を忘れることができなかった。

この場から逃げるためのウソとは言え、もう少し違う言い方をしてこまかすことができなかったのだろうか?

そう思った玲奈に、
「別にいいんじゃない?

あの人、姉さんに気があるみたいだし」

笙はやれやれと言うように息を吐いた。

「そうなの?」

そう聞き返した玲奈に、
「そうに決まってるでしょ?

でなきゃ、変な言い訳をつけて姉さんの手を握ってなんかこないよ」

笙は答えた。
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