純情喫茶―恋する喫茶店―
彼女の名前は、中津柚葉(ナカツユズハ)である。

幼い頃に家を出た母親の名前だ。

すでに閉店した店に母親を入れると、椅子に座らせた。

母親は笙が出したハンカチで涙を拭いていた。

その姿を見ながら、2人はコーヒーを煎れていた。

間違いなかった、彼女は自分たちの母親だ。

コーヒーを煎れている間に、2人はアルバムを引っ張り出して母親が写っている写真を見ていた。

間違いない、母親だ。

「――コーヒー、できたよ」

玲奈は母親の前にカップを置いた。

母親がそれを1口飲むと、
「――美味しい…」

小さな声で呟いたのが聞こえた。

母親はカップをテーブルに置くと、また泣き出した。

玲奈はその背中をさすると、
「――お母さん…」
と、呟いた。

「――ごめんね、2人共…」

小さな声で母親が謝った。
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