純情喫茶―恋する喫茶店―
「――気にしなくていいよ…」

そう言った笙の目は潤んでいた。

「――私も、恨んでないよ…。

むしろ、嬉しかった…」

玲奈は洟をすすった。

そんな2人に母親は顔をあげて、
「――ごめんね、まだ幼いあなたたちを置いて家を出てって…」

涙声で何度目かの謝罪をした。

「――父さん、最後まで母さんのことを心配してた…」

笙が呟くようにそう言ったので、母親は驚いたと言うように彼を見た。

「――最後までって、お父さんは…?」

呟くように聞いてきた母親に、
「亡くなった、3年前に病気で亡くなった。

でも、最後まで父さんは心配してた」

笙は呟くように答えた。

「――お父さんも喜んでると思うよ…。

私たちがお母さんに会えたことを喜んでいるよ…」

指先で涙を拭いながら、玲奈が言った。

泣き崩れた母親の躰を玲奈は支えた。

親子3人のすすり泣く声が、店に響いていた。
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