純情喫茶―恋する喫茶店―
笙は地面に倒れたままの状態で、上を見あげた。

サングラスをかけていたため、相手の顔はわからなかった。

アロハシャツみたいな派手なシャツに、白いスーツを着た男が自分の目の前にいた。

何があったのかと考えていたら、今度は背中に蹴られたような痛みが走った。

「――ッ…!?」

驚く間もなく、今度は誰かに髪をつかまれた。

髪をつかまれたままの状態で無理矢理立ちあがらされると、今度は腹を蹴られた。

訳がわからない状態で、笙は地面に転がった。

(何なんだ、一体…?

俺は何で殴られているんだ…?)

笙は両手で蹴られたお腹を押さえながら、下から相手を見あげた。

白いスーツの男が口を開いたかと思ったら、
「おい、兄ちゃん。

お前、中津柚葉の身内だろ?」
と、言った。

「――中津柚葉、母親ですが…?」

呟くように答えたら、
「そいつの行き先を知ってるか?」

後ろから、男の後ろから彼の仲間らしき人物の声が笙に聞いてきた。
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