タイガーハート
プロローグ


春の匂いがする昼下がり。



『よしこい!!』

廊下にこだまする叫び声。



教室後方。
廊下側の席に座り、それを眺める。


「…ガサツ」




『ももーーー!!』

甲高い女の声が教室の窓から身を乗り出し、その叫び声の主を呼ぶ。


『ん!?はぁあい!!』

箒をバットのように掲げたまま返事をする。


バットのように、ではない。

正しくは

バット替わりにしている箒を掲げたまま、だ。




『次、体育!!着替えないと!』

おかまいなしに続ける。



『まじかぁ!!そうだった!

あたし行くわ!』

箒を降ろし、教室に入ってくる。


とてもじゃないけど、女に思えない。


振り返ると、

教室の真ん中、カバンから袋を取り出している。


絶叫のバッター。

伏見 百花。


茶色のストレートロングヘア。

見た目は平たく言うと、ギャルだ。
しかし元から綺麗な顔立ちをしている。


ただ、とても男勝り。

そして、ガサツ。

そして、馬鹿だ。


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