タイガーハート

それからは、お互いがお互いを意識するものの、何となく口を聞けずにいた。

昼休み。
前の席に座る隼人が口を開いた。

『虎。

何か隠してるでしょ?


例えばー、伏見の事とか?』


隼人にはすぐにバレると思っていたが、相変わらず鋭い。

「あー。うん。

付き合ってる」


『やっぱり』

肩をすくめて笑う。


『ずっと虎は伏見の事、意識してたしね』
言い終わる前に、席から腰を上げた。

『ちょっと購買部行ってくるわ』

そう言うと、隼人は教室を出ていった。


もうご飯は食べ終わっている。追加で買いに行くなんて珍しいな、と机に肩肘をついて考えていると。

『小虎!』

前の席に、ぴょんっと座る人影。


「伏見」

なるほど、隼人は気を利かせたわけか。

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