モテKingのターゲット


「なぁ、ここって………」


ケンが言い淀んだのも無理はない。

俺らが歩いているのは、キャバクラや風俗の店が立ち並ぶ通りだ。



女には幾つもの顔があるとよく聞く。

でもそれは、その人自身のもつ性質の顔であって、実際の風貌とは違う事くらい俺だって解る。

だが、俺の視界にいるあの女には、確かに幾つもの顔があるようだ。


駅から暫く歩くと、女は『CLUB 泉』と書かれた店に入って行った。


「おいっ、入って行ったぞ?この後、どうする?」

「…………」


俺は女が入って行ったドアをじっと見据え、思考を巡らす。


現在の時刻、16時10分。

目の前の店が開店してるとは思えない。


もしかして、これからこの店で働くのでは?とも事も考えたが、腑に落ちない点が浮かび上がる。


「なぁ、おかしくないか?」

「何が?」

「まだ日も高い時間帯なのに、高校の制服を着た姿で堂々と出入りするのは……どうかと思うんだが」

「言われてみれば、そうだな」


< 43 / 168 >

この作品をシェア

pagetop