いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


仁奈ちゃんはにこにこと笑って、私が手を握ってくれるのを待ってくれていた。


「……仁奈は、心咲ちゃんのこと、絶対に裏切るようなことはしないよ。それに、俺も春斗も。“大切な友達や恋人は全力で守る”。これが、俺ら幼なじみのモットーだから」


そして顔を上げた先には、口元に笑みを浮かべている蒼くんがいた。


私はそっと目を閉じて、大きく深呼吸をする。


小刻みに震えている指先を、少しずつ、少しずつ、仁奈ちゃんのてのひらに近づけていく。


……本当は、まだ怖いんだ。


誰かを信じることが、誰かの優しさに甘えることが。


でもね、怖がってその場に立ち止まったままじゃ、ダメだと思うから。


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