月下美人が堕ちた朝
20060725am06:12
ベランダに出たら、月下美人が首を墜として死んでいた。
朝日はこんなに優しいのに、現実は残酷だった。
あたしは彼女の死体にキスをして、それを空中に投げる。
「さよなら」なんて、綺麗な言葉は聞こえない。
コンクリートに叩き付けられた月下美人の無惨な姿は、今のあたしに、どこか似ていた。
「さよなら」
昨日の夜、あたしは確かにそう言った。
殺意を持つほど愛してしまった恋人に。
空気みたいだった。
あたしはスバルがいなければ呼吸が出来なかったし、彼も同様だと、そう思い込んでいた。
彼がホストのバイトで帰りが遅い夜は、呼吸が苦しくて眠れなかった。
酔っ払って帰ってきて、あたしの話なんか聞かずに眠るスバルが憎くて憎くて、だけど愛しかった。
愛しすぎて、首を絞めて起こしたことも何度かあった。
その度に「ごめん、愛してるよ」と、顔を歪ませて言ってくれたのに。