月下美人が堕ちた朝
20060725am09:36

携帯電話がメールの着信を知らせる。

スバルではない。

スバルからメールが来たときは「The Rose」が流れるように設定してあるから。

それに、スバルはもう二度とあたしに連絡はしてこないだろうと、諦めている。

メールの送り主は、アヤねぇだった。

今日も、娘のリンカにピアノを教えて欲しいそうだ。

あたしは承諾の返事をして、携帯電話を放り投げた。

アヤねぇは、二十歳のときにリンカを産んだ。

当時十三歳だったあたしは、自分が叔母になったという事実が信じられなかったが、リンカを妹のように可愛がった。

あたしが好きなピアノを教えたり、絵を描いたり、リンカといると優しい気持ちになれるような気がした。

だからあたしは週に1回はリンカと逢うようにしている。

学校やバイトでどんなに疲れていても、スバルと喧嘩したときでも、リンカの笑顔であたしは癒された。
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