月下美人が堕ちた朝
20060725am10:58
衝動的に、何度も眉毛を書き直した。
それなのにやっぱり、あたしの眉毛は母親譲りのままだ。
諦めて、一度しか使ったことのないパープルのアイシャドーを塗った。
可愛くない。
だけど、それで良い。
あたしは睫にマスカラを五度塗りして、化粧を終えた。
また溜め息を吐いて、煙草に火をつける。
リンカの前では煙草を吸えないから、今のうちに吸っておく。
煙が喉を通る度に、空腹を感じる。
何かを食べる気にはなれないのに、人間の体は不思議だ。
あたしは煙草を加えたまま、仕方なくキッチンに足を運ぶ。
冷蔵庫には、スバルが四日前に買ってきた桃が二つ並んでいた。
「一週間後に食べ頃だって、店のおばちゃんが言ってた」
だから一週間後に食べようね、と、約束してくれたっけ。
可哀想なのは自分の方なのに、何故かあたしは寄り添う桃の姿に同情し、急いで水道水で洗う。