月下美人が堕ちた朝
あたしは急いで浴室に入り、シャワーの蛇口を捻った。

スバルの香りを、とにかく洗い流したかったから。

スバルがあたしのすぐ隣に居たという現実が、独りきりになった今、とてつもない脅威となって襲いかかってくる。

いきなり冷水を浴びたせいで、一瞬呼吸ができなくなった。

これだから家賃5万の、対して新しくないアパートは嫌なんだ。

地元の大学に進学したのに、独り暮らしを希望した我儘娘に、両親はこんな部屋しか用意できなかったのか。

自分たちには良く投資するくせに。

まあ、頭を冷やすには、丁度良かったのかもしれないけれど。

少しずつ暖まっていくシャワーの温度が、あたしのココロを溶かしてくれれば良い。

見栄とプライドと自己愛でしか創られていない、この「カイドウ アミ」の全てを溶かして、消してくれれば良いのに。

あたしはそんなことを願いながら、スバルと一緒に選んだ新発売のシャンプーで、髪の毛をゴシゴシ洗ってやった。
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