明日を迎えられない少女は何を望んでいたのだろうか。
「この人って、正岡先生の奥さんじゃないよね」
「そうだと思う」

 クラス中がざわつく。
 みんな、思っていてもあえて明言を避けていたのだ。

「あんな奴でもこういうことしてんだな。何で俺に彼女が出来ないんだよ」

 遠藤君ががそうおどけた様子で口にする。

 クラスでどっとざわめきが起こった。

「やっぱりお金じゃないの? この学校って結構給料がいいみたいだし。私は嫌だけどね」

 遠藤君の隣にいた小西さんがそう大げさに肩をすくめた。


「この写真、黒板に貼っとこうぜ」

 そう遠藤君が提案し、隣にいた上井君が不満そうにえーっと口にする。

「それよりこのままのほうが面白くないか。黒板だと顔がみえないじゃん」

「確かにな。後ろの黒板は? みんなから顔がばっちり見えるよ」

「あいつが気づかなかったらどうするんだよ」

「他の先生が気づいたら気付いたで面白くね?」

 彼らの興味はどうやって先生を驚かすかに移っていた。
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