一つだけ願いが叶うなら
少しでも気を抜いたらまた涙が出そうで、俯きながら涙を必死に我慢していた。

そんなとき、頭の上に温かいものを感じた。

それは萩原空の手だとすぐ分かった。


空『まーでも、自分のやったことを後悔して謝りに来たことは見直したよ。

佐伯さんがやったことは許されないこと。

でも素直な奴は嫌いじゃないよ。』


私の頭の上に手を乗せたまま、萩原空はそう言った。


『嫌いじゃない。』


萩原空のこの一言は、今の私の涙腺を崩壊させるには十分な言葉だった。

さっきまで氷みたく冷たかった心が萩原空の一言で温かくなるのを感じた。
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