甘やかな螺旋のゆりかご


――


時刻は深夜0時。


お父さんとお母さんはとっくの前に寝てしまっていた。


静かな静かなキッチン。あたしとお姉ちゃんはオーブンの中を見守る。


ピーという機械音が鳴り響き、あたしはミトンを手にはめてオーブン皿を中から取り出す。


「そっと、だからね」


「うん」


ひっくり返さないように気をつけながら取り出した皿の上には、綺麗に膨らんだのと、見た目からでも分かる硬そうな、小振りなガトーショコラが二つ。


肩を落としたあたしの頭をぽんぽんと撫でて、お姉ちゃんは大丈夫だと言ってくれた。


「大丈夫よ。スポンジケーキじゃないんだから。わたしのだってそのうち萎むし、それがいい感じの見た目になるのよ」


「……ホント?」


「うん。本当に。いつも食べてくれるとき言ってくれるでしょう?ぎゅうっと詰まった感じが美味しいって」


「うん」


「これは詰まってるほうが良かったりするの。冷まして寝かせて、学校行く前にカットしてラッピングしようね」


「起きれるかなぁ」


「わたしも一緒に起きてあげるから」


会社が近いお姉ちゃんは、いつもあたしより朝は遅い。


ありがとうと言おとしたあたしの声は、


「ただいま~」


深夜だからか気を使いながら玄関を開けるお兄ちゃんの帰宅によって行き場を失った。


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