【番外編】 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~
side:ディーブ
男は本当に美しいモノを見て、満足した表情で絶命した。
馬鹿な人だな...。


「こんなの、美しいわけ...無いじゃないか...。」


何でそんな事言うんだ。
よりによって、最後の言葉に...。


「もっとマシな言葉を残すべきだろうッ!!?」


今更肉塊に訴えても何もかもが遅すぎる。
血だらけの肉塊を力無く殴りつけても、返ってくるのは静かな血の音だけだ。

ぼくは肉塊(これ)に何を望んでいたんだ。
怖がられたかったのか、嘲笑して欲しかったのか。
醜い人間だと罵られたかったのか。
これじゃまるで、マゾヒストじゃないか...。


「肉塊(貴方)は、何を求めていたの...?」


答えは解っているじゃないか。
渇いた欲望、満たされない心、其れ等を唯潤していただけじゃないか。
何をしているんだ、ぼくは。


「何なんだ...。」


何で今泣いているんだ。
何が悲しいんだ、悲しいってなんだ。

自分が解らなくなっていく、ドロドロと溶けていく。
吐き出しそうだ...。
でも、何を吐き出すんだ。

ぼくの中に何が有るんだ。
何か有ったのか。
抜け殻なのか...ぼくの中に有るモノは、あの人が詰め込んだモノしか無いのか。


「何、泣いてんだ。ったく...。」


後ろからセルリアの声が聞こえた。
勝手入って来るなって何時も言っていたのに、入って来る足音さえ聞こえなかった。


「殺ったんだろ。早く処理すんぞ。」

「...うん。」

「おうおう、また盛大に殺ったなー。」

「うん...。」


涙を拭いながらぼくは、肉塊を固定しているベルトを外していった。
繋がったまま垂れ流しにされたいる臓物が、床に鮮血を描いていく。
セルリアはぼくの後ろに立っているままだ。手伝うわけではないのか...。

其れもそうか、こんな血生臭いモノを進んで触れに来るわけないか。
其れ以前にセルリアに殺し以外で期待する事が、間違いだったのかもしれない。































其の後、滞りなく処理は終わった。
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