はるのリベンジ


沖田助勤に連れて来られて、土方副長の部屋に入るも・・・。明らか殺気立っている。





そして、報告を済ませた沖田助勤が、


沖田「行こっか?」


と腰を上げた時、



地響きのような、低い声が私たちを止める。




土方「オイ。待てよ。他に何か言うことは無いのか?」



沖田「えー別にありませんけど?」




土方「では、聞くが・・・。どうして、俺は、湯浴みと着替えを3回もしないといけなかったんだ?」




沖田「3回か・・・。5回はイケると思ったのに・・・。」


小さく、沖田助勤が呟く。



はる「5回って・・・?」



すると、沖田助勤がニヤリと黒い笑みを纏った。


沖田「やだなぁ。梅ちゃん♪ここで、見廻りに行く前に、土方副長の墨と筆に細工してどれだけ着替えさせられるかって賭けてたじゃない?梅ちゃんの勝ちだね♪」




はる「なっ。まさか、あの、最後の・・・。」



土方「梅ぇぇぇぇ!!!」



はる「しまった・・・。ち、違います!聞いて下さい!」


すると、土方副長が、抜刀した。そして、焦点は私。




土方「梅・・・。お前の役目を聞こうか?」



はる「え・・・っと。 諾士取調兼監察方です。」



土方「あぁ。他には?」



土方副長は、とっても色っぽい顔で微笑まれてるが、目は全く笑ってない。それどころか、この視線と殺気で殺されるんじゃないかと思う。




はる「い、一番隊隊士です。」


土方「他は?」



ゴクリ。

唾液すら出てこない。喉がカラカラだ。


はる「お、お、沖田助勤のこ、小姓です・・・。」



土方「そうだ!やっっっと出たなぁ。忘れてるんじゃないかと思ったわ。ははははは。」


はる「ははははは。いえ。覚えてまっ・・・!」


バシュ。


パラパラパラパラ。


いきなり、振り下ろされた刀を瞬時に避けたが近くの書簡に当たり紙がバッサリ斬れている。



はる「何故、俺を・・・。」



土方「俺と総司は、昔からの付き合いでなぁ。段々、悪戯が過ぎるようになって、幾ら怒っても響かねぇ。んで、考えたんだよ。総司に、小姓を付けて悪戯する前に止めさせれば良い、とな。それに、総司に言って響かなくとも、小姓には、響くだろ?そしたら、命懸けで止めるだろ?そう思わねぇか?」




なるほど。だから、沖田助勤の組の隊士さん達、私のこと大歓迎だったんだ。



これは絶対、引き受けてはいけないお役目だったんだ。



今、知っても後の祭り。



取りあえず、落ち着いて頂いて・・・。



はる「思います!次は、見落とさないよう、精進しますっ!」



沖田「あ!もう良いですか?買ってきた団子食べたいんですけど。」


土方「お前・・・。見廻り中に何、やってんだよ!」



沖田「梅ちゃんが、買ってくれたんです。あ・・・。あれは、貰ってたのかな?ふふふっ。土方さんより色っぽい顔してましたよ?」


はる「なっ。沖田助勤!なんて事を!!」



土方「梅・・・。お前、何やってんだ?あぁぁ?辞世の句を詠めよ?俺は、優しいから待ってやる。」



沖田「辞世の句?詠んでも、理解してもらえないんじゃないですか?だって、わらし同然の作品を詠む人に見てもらってもねぇ?梅ちゃん♪」



パシュ!



はる「ひぃっ。」



今居たところの畳切れてる!



土方「もう、許せねぇ!覚悟を決めろっっ!」




私は、沖田助勤に手を引かれる。



沖田「ふっ。土方副長な・ん・か・に・捕まるわけないでしょう?ねぇ、梅ちゃん♪行こう!」



そして、私の、命懸けの鬼ごっこが始まった。







はる「はぁ・・・。はぁ・・・。はぁ・・・。」



土方副長に、用事があった、近藤局長のお陰で、鬼ごっこから解放された。




山崎「おかえりー。お疲れさん。」


はる「や・・・。山崎さん・・・。し、死にそうです。いや。死ぬかと思いました。」



肩で息をしている。



山崎「これ、毎日やから。」


はる「え・・・。」


私は、青ざめる。



山崎「悪戯を止めるか、命懸けの鬼ごっこをするか、どっちかや。」



はる「嘘・・・。」


バタッ。思わず倒れ込む。


毎日、こんなの?



はる「だ・・・。だから、一番隊の皆さんは、最初、嫌な顔してたのに、俺が、小姓って解った途端に優しくなったのか・・・。」



山崎「そうそう。沖田助勤の小姓ってのなかったら、いきなり、一番隊隊士とか、嫉妬されまくりやで。」



それで、最初、あんなんだったのか。

はる「ちなみに、私の前はどなたが?」


山崎「ん?俺や。でも、俺、隊も違うし、密偵とかしてたら、他の人に頼むこと多くなって。だから、土方副長も、他の皆も感謝してるんやと思うで?」


はる「嬉しく無い・・・。」


山崎「ははは。まぁ、梅は、沖田助勤に気に入られてるからな。あの人も、可愛いとこもあるんやで?」



はる「今は、憎しみしかありませんけど。」


山崎さんは、私の頭をポンポンとして、怖い一言を言う。



山崎「まぁ、他の隊の奴らに何かされたら言うんやで?一応、助けたる。」


はる「一応?」


山崎「ははは。あぁ、一応な?まぁ、小姓に関係してる奴らは、絶対、助けてくれるわ。また、あの地獄の日々より、梅の事、守る方がええに決まっとるし。」



はる「地獄の日々・・・。」



私は、これからの日々に、不安しかなかった。










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