エリート室長の甘い素顔
「ちょっと松村ちゃん、なんとかしてやってよ!」

 桑名が悠里の肩を掴んで揺らす。

「は? え、私?」

 突然の振りに面食らっていると、河野もふざけて便乗してきた。

「そうだよな。俺らの愛すべき『呑んだくれの男やもめ、大谷寿史カッコ四十歳』を引き受けられるのは、松村さんだけかもしれない」


(引き受けたいのはやまやまなんですけど……)

 肩を落として大きなため息を吐くと、悠里が口を開く前に大谷が怒りだした。

「こらっ河野! なんだその紹介はっ!」

「えー、だってその通りじゃないっすか」

 大谷は鼻息荒く答える。

「俺の歳を世間にバラすなっ」

「え、そこ?」

 河野と桑名はゲラゲラと笑った。


 エレベーターが営業部のフロアに到着すると、二人は名残惜しそうな顔をして降りていく。

「大谷さん、新年会、忘れないでくださいよ」

「あとで日程調整しまーす」

 二人に手を上げて「おー」と答えた大谷は、悠里を振り返った。

「お前も行くだろ?」

 当然といった口調に内心ホッとしながら、悠里はうなずいてみせる。

(スケジュールの調整、つくといいな……)

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