エリート室長の甘い素顔
 正直、安藤がいてくれて物凄く助かった。

 冷静になったり、パニクったりを繰り返す弟を宥めながら、入院に必要なものを挙げてくれた。

 保険証は母が持っていったというので、どうか母も落ち着いていてくれたらいいと思いながら、支度を整えた。


 連絡が来たのは支度を終えたすぐ後で、有名な大学病院の名前を告げられる。

 容態を聞けば、電話口の母の声が震えた。

『危ないの……意識が戻らなくて。すぐに手術になるって』

 悠里は「すぐに行く」と伝えて電話を切った。

 受話器を持つ手も震えていた。それを横から安藤が受け取り、定位置に置いてくれる。


「きっと大丈夫だって信じましょう。さ、出発しますよ」


 悠里はうなずき、弟の手を握りながら家を出て、一緒に車の後部座席へ乗り込んだ。

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