エリート室長の甘い素顔
「ん……」

 また熱い唇が押し付けられる。
 悠里の唇を喰み、強引に押し開いてきた。

 舌が悠里のそれを捕らえ、擦り合わされる。
 軽く吸われると苦しくて、悠里が身体を引こうとしたら、腰に回された腕が逃がさぬように強く引き寄せた。

「大谷さっ……」

「諦めろ、松村。もう止まんねぇよ」


 悠里は目を瞬かせて、呆然と大谷を見つめた。

(諦めろって、何を?)

 もう逃げられない――そういう意味なら、逃げるつもりなど端からなかった。

 ずっと、ずっとこうしたかったのは悠里のほうだ。

 大谷に触れて、この大きな胸に抱かれて溶け合いたかった。

 ずっと好きだったのだ。わかっていないのは大谷のほうだ。


「じゃあ止めないで。早く……大谷さん」


 その言葉に、大谷は眉根を寄せて顔をしかめた。

「お前……今の台詞、後悔すんなよ」


 大谷は少し屈むと、お尻の下に腕を回して悠里の身体を担ぐように軽々と持ち上げた。

「きゃっ……!」

 慌てて首にしがみつけば、大谷は片手でポイポイと悠里の靴を脱がせて、そのまま奥の和室に突き進む。

 明かりは玄関先で点けたものだけだ。和室にもその明かりがほんのりと届いていた。

 敷きっぱなしの布団の上に下ろされて、そのまま押し倒される。

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