噂の壁ドン

家を飛び出した貴美。
仕事が忙しくてイライラして
はけ口を貴美に向けた。

「パパの馬鹿！！ママは、悪くないもん
なんで怒るの！！真矢！パパなんて嫌い
泣きながら自分の部屋にこもってしまった。
ベランダに出て煙草に火をつけた。
手元がおぼつかない。
ぐるぐる回る感情。
「あ〜〜！くそ！」
はぁ〜。大きく深呼吸した。
「貴美…。」
真美の
部屋のドアをノックし
「パパが悪いよな。ママを探してくるからいい子で待っててくれるか？」
ガチャッとドアが開き
「お迎え行って！パパの馬鹿！」

俺は、走って外に出た。
あいつの行きそうな場所。
わからない。
俺は、貴美の何を見てたんだ…。
何を知ってるんだ…。

拳を握りしめて震えた。

明かりが灯るコンビニの方へ向けた視線

若い男らしいヤツの隣りを貴美が
寄り添うように歩いていた。

あいつ、誰だ！！
駆け寄って貴美を俺の方へ引き寄せようと手を伸ばした。

ガッン、
頬を殴られた。
「貴美さんを泣かせたりするやつに
返したくない！！」

「誠一郎さん…。ありがとう。でも、
私が選んだ人だから…。」
「貴美…。

「貴美…。ごめんな。お前が出て行って
どこを探していいか、わからなかった。
何にも分かってなかった。」

「うううん。私がいけないの。」

拓美の香り。私の大好きなフレグランス

「帰って来いよ。真矢も待ってるから。
「うん。」

「拓美さんって言ったっけ！また、貴美…を泣かせたら俺、全力で奪うから！
忘れんな！！」


「ふっ。奪えるもんならな！残念だが
貴美は、俺の妻だ！たった一人の
愛する女なんだよ！」