蕾の妖精たち
「おはようございます。県警の富永です。どうされました? その電話、翠川先生とは、連絡が取れないんですか?」


 職員室で受話器を持ったまま、翠川先生が出ないと、玉井は呟いていた。


「学長の玉井です。今朝のバス事故の対応に追われてまして」


「実はね、その翠川さんから通報がありましてね、そのバス事故について、翠川先生にお聞きしたいことがあるのですよ」


 富永は着古した紺色のヨレヨレの背広を纏い、玉井を下から見上げた。


「通報? 翠川が何か?」


「まだ話せませんよ。しかし、何処へ行ったのでしょうね」


「こちらが聞きたいぐらいですよ。一人でも応援が欲しくて、今、連絡したところです」


「そうなんですか。ならば私が翠川先生の自宅を、確認して参りましょう」


「警察がどうして?」


「先程申しました通り、お宅の学校のバス事故に、関係がありましてね」


「学長室なら、話して貰えるのでしょうか」


「やはり、先に翠川先生の自宅に行きましょう。失礼致します」


 富永は職員室を出ていった。


 玉井は富永を見届けると、直ぐに理事長へ連絡した。

 
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