ダンデライオン
「1人の男として、アサちゃんのことが好きだった。

だから…」

「――待って!」

頬をさわっていた忍兄ちゃんの手を払った。

忍兄ちゃんが驚いた顔をする。

私、今すごくひどいことをした。

お兄ちゃんのように慕っていた忍兄ちゃんの手を払って、それで…それで次は、何をするの?

どうすればいいのか、自分でもよくわからない。

朔太郎が私以外の女の人と一緒にいるところを見たから、頭の中がパニックになっているのかも知れない。

頭の中がパニックになっているから、自分の思うように思考が働かないのかも知れない。

忍兄ちゃんは悲しそうに眉を下げると、
「もちろん、返事は待つよ。

何日…いや、何年でもアサちゃんから返事がくるのを待ってるよ」
と、言った。
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