ダンデライオン
それにしても、口の中が気持ち悪い。

当たり前だ。

昨日の昼から飲まず食わずの状態だったんだから。

のども乾いているうえに、躰は軽めの脱水症状を起こしているような気がした。

水を飲もうとベッドから起きあがろうとした時、コンコンとドアをたたく音がした。

「はい」

ドアに向かって声をかけると、
「おはよう、麻子ちゃん」

さくらちゃんが病室に入ってきた。

「さくらちゃん!」

予想もしてなかった彼女の登場に私は驚いた。

「美森ちゃんと麻子ちゃんのお父さんから聞いたわ。

麻子ちゃんが盲腸で入院したって」

さくらちゃんはそう言った後、ソファーのうえにボストンバックを置いた。
< 317 / 360 >

この作品をシェア

pagetop