夏のわすれもの
彼女に自分の気持ちを伝えるのは、今しかないと。

俺の目の前を去って行くモデルのような彼女の後ろ姿に、
「――あの…」

俺が声をかけると、彼女が俺の方に振り返った。

「――私じゃ、ダメですか…?」

そう言った声は、少しだけ震えていた。

「私じゃ、周さん――綾香さんの恋人になるのは、ダメですか?」

彼女がまっすぐに、俺を見つめる。

一字一句を外さないように、ずっと見ていた彼女に思いを伝えるために、俺は言った。

「出会った時からずっと、あなたを思ってました。

1人の女性として、あなたを見ていました」
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