夏のわすれもの
話の内容は、陣内の見合いだった。

その話を聞いた瞬間、俺は複雑になった。

何故なら、あいつが首を縦に振ってうなずいてくれるはずがないからだ。

幼い頃の出来事によって、陣内は愛を知らない。

「龍平には、寂しい思いをさせたと思ってる」

暗い声で、申し訳なさそうに陣内のじいさんが言った。

いつも仕事に手がいっぱいで、じいさんは孫に構うことができなかった。

遊んでもらったことなんか数えるくらいにしかなかったと思う。

話の結果、俺が陣内に見合いを勧めることになった。

じいさんの手から渡された写真を見たとたん、俺は驚いた。
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