嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「別に貴方が邪魔だから御見合い写真を押し付けていたわけじゃないわ。ただ、晴哉の時間は止まったままだけど、――貴方は時間を刻んでいるんだもの。貴方を見守っているのは、幹太君だけじゃないからね」
「何でその名前を」
今、一番聞きたくなかった。
家に帰っているはずなのに、今日、私と巴ちゃんが消えた件について尋ねてくるわけもないし、昨日の件を謝る素振りもない。
ただ、私が縁側でぼうっと眺めていても、幹太からは近づいてこないんだもん。

私だって今は、近づきたくないって、関わったらいけないって思ってるもの。

「貴方は小さな頃から、はっきりと形に現れる方を単純に選んでいたわ。シャボン玉より風船、月さまより太陽、熱い視線より真っ直ぐな笑顔」

クスクスと笑う。

「その選択を間違いだとは言わないけれど、でも私たちももう二人の問題だろうから何も言わないつもりだけどね」

――あの子が春月堂を大きくしようと頑張って働いている菅らはいじらしいわ。


そう笑う。

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