嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

「お待たせ」
「飯は?」
「勿論、お店の賄いを期待して食べてないよ」

お昼は、幹太のおばさんが職人さんやパートの人の為に週に二回、賄いを作ってくれる。
しばらく料理も作れなかった私は、カップラーメンを段ボールごとロッカーに入れていたから正直助かっている。

にこにこと機嫌良く笑った私に、幹太は笑いもせずに真っ直ぐ見ながら言った。


「頼ってばかりだな」

私の返事も待たずに、そのまま背を向けると店までの近道として、庭を横切って行く。

――頼ってばかり?

首を傾げる。

「あんたが、無理やり引きずり出してくれたんだから、頼ったっていいじゃない」
「悪いとは言ってない」
「どうみても、刺があった。どうせ私は、料理も車の運転もリハビリ中だし、字は汚いし、お母さんに負担ばっかかけて具合悪いのも気づかない、女失格野郎ですよ!」
「そこまで思ってもない」

面倒くさそうに溜息を零されると、肯定しているようにしか思えない。
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