嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

『俺は嫌だからな』
私を引きずりだすと、そのまま庭に連れ出した。
久しぶりの朝日が眩しくて、そのまま灰になってしまうかと思った。

『お前も晴哉も居なくなるなんて、俺はもう耐えられない』

『幹太』

『頼むから――生きてくれよ』

さわさわと、桔梗の花が咲いていた。幹太が私に背を向けた先に夜が明けたばかりの紫の空の様な、桔梗の花が一面に咲いていた。

ああ、そうだね。
晴哉はその花を見ては、私と交互に見てどちらも綺麗だと笑っていたよね。
何も喋らない無口な幹太と一方的に怒鳴る喧嘩をしても、晴哉はにこにこ笑って間に入ってくれた。


貴方が――好きよ。
貴方が好き。
これからも、ずっと貴方が好きよ。
朝焼けの空を見たら、きっと貴方を思い出す。
桔梗の花が揺れたら貴方を思い出す。
肉じゃがを見たら、お味噌汁を見たら、黒い車を見たら。
薬指に光る貴方との誓いの印を見たら――。


その後、貧血で倒れた私は病院へ、お医者さんが妊娠三カ月だと教えてくれた。
彼が残してくれたこの命を、守って生きていこうと心に決める。

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