嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。

うふふと上品に笑うと、視線を縁側に向ける。縁側からは歪な形の月が見えた。

「いつか、ね、思ってたの」
「何をですか?」
「うふふ。貴方はまだ気づいていないから。いや、逃げているから分からないと思うわよ」
「?」
お義母さんは意味深な言葉を言うが顔はこちらを見なかった。
それがわざとらしくて。私は首を傾げる。
「いつか、ね。だって貴方達、生まれた時からずっと一緒にいるんだもの」

貴方達?
ずっと一緒?
そんな言葉を拾い集めたら、思い浮かぶのは私と晴哉と――。

お義母さんは、私が気付いていないと笑う。
でも、私もそこまで馬鹿じゃないわ。

言葉をくれないなら、私は気付かない。気づいてはいけない。

このままでいいの。
このまま、太陽という後ろ盾が無くなった月を見上げるの。
後ろから光をくれてい太陽がいなくなったら、――居なくなっても。

月は夜空でほんのりと浮かび上がるのかしら。

月の表面が冷たいのかなんて気にならない。

月は、太陽が必要なくても本当は輝けたのかもしれない。
そう思うと、私の体温が低下していくの。

< 47 / 131 >

この作品をシェア

pagetop