嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。


「幹太がデートしたから?」

デート?
一瞬、何の話をしているのか分からず首を傾げる。

「ほら、鹿取家の若い子」

巴ちゃんからそんな事を聞くとは思わず、しかも美鈴ちゃんのことまで知っていたなんて驚いた。
「ちがうわよ。あのデートは私が勧めたようなものだし」
「なあんで貴方がデートを勧めちゃうよの! じゃあ何があって避けてるの?」

オカマみたいな喋り方で、噂好きのオバサンみたいに根掘り葉掘り聞かれたら、苛々してしまう。

「アンタに関係ありません。1000円です」
ツンツンと接客しても、巴ちゃんは怯む様子もない。

「貴方、それでいいの? 幹太の気持ちも貴方の気持ちも、鹿取家のお嬢さんの気持ちも。貴方が逃げるから何一つ幸せになっていないのよ」
「代金を早くお願いします」

御説教なんて結構だ、と払いのけると巴ちゃんは渋々お財布を取り出して代金を払う。
熨斗をお願いしたくせに忘れていると言う事は、字を書くのが苦手な私への嫌がらせだったに違いない。

「定時いつ? 終わるのを待っていていいかしら」

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