英雄の天意~枝葉末節の理~

 ──その夜、ナシェリオの家のドアが叩かれる。

 ドアを開き、そこに立っている友人に嫌な予感を覚えた。

「どうしたんだ?」

「ちょっと話さないか」

 ラーファンの声色には、いつもとは違う何かが秘められているように感じられた。

 ナシェリオは友人を中に促し、椅子に腰掛けて彫刻の続きを行う。

 暫時(ざんじ)、沈黙が続き暖炉の薪がそれを嫌うように音を立てる。

 ラーファンはナシェリオの作業をじっと見つめて、おもむろに口を開いた。

「彼が言っていた。お前は強いって」

 それにぴたりと手を止めて視線を合わせず眉を寄せる。

 余計な事を喋ったのかと憎らしげに奥歯を噛みしめた。
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