英雄の天意~枝葉末節の理~
 ラーファンを諦めさせるための口実としたのだろうけれど、彼のプライドを考えればそれは逆効果だ。

「鍛錬だけじゃあ強いとは言えない」

 外に出れば木の人形を相手にする訳じゃない。

 決して殺さないと解っている相手と剣を交える訳じゃない。

「現に私は、君に敵わない」

「そうだな」

 あまり納得したとは思えない返答にナシェリオは拳を握りしめる。

 実際はナシェリオが勝とうとしないだけだという事は気付かれていないはずだ。

 ナシェリオの剣は身を守るためのもので力任せで相手をねじ伏せるラーファンの剣とはまるで違う。

 しかし、向かってくる相手の力を受け流す事が出来るナシェリオの技は勝ちは無いが負けもない。

 ナシェリオの剣はあくまでも自分の身を守るためのものであり、決してこちらから攻撃を仕掛けるものではない。
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