英雄の天意~枝葉末節の理~
「両親はどう説得するつもりなんだ」

「村のみんなが盛大に送り出してくれるさ」

 口角を吊り上げ、意味深げにあごをさするラーファンに眉を寄せる。

「どういう意味だ」

「ドラゴン退治に行くんだぞ、言えばみんなが見送ってくれる」

 そうなれば誰も俺たちを止められない。

 ラーファンの考えにナシェリオは目を見開いた。村を巻き込んで両親を黙らせるつもりなのか。

「自分のために動けないなら俺のためについてきてくれ。お前の助けが必要なんだ。俺のために、頼むよナシェリオ」

 両肩を掴まれ懇願するラーファンから視線を外す。

 それでも、掴まれた肩から伝わってくる感情に喉が詰まる。

 ラーファンにはもう、どんな言葉も届かないだろう。

 唯一の引き留める理由となっていた両親の反対も使えなくなった。
< 109 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop