英雄の天意~枝葉末節の理~
 にも拘(かか)わらず、ナシェリオに俺はなんと情けないことを言ったのか。

「怖かっただろう。一人で闘わせてすまなかったな」

「いいんだ」

 解ってくれただけで充分だと安堵する。

 本当はこのまま「お前とは旅は出来ない」と引き返してくれれば良かったのだが、そうもいかないようだ。

「でも、これで俺も安心して旅が出来るよ。お前を守らなきゃとずっと思っていたから」

 ああ、彼にはそういう意識があったのかとナシェリオは嬉しく思う反面、ならば何故私と旅をしようなどと考えたのかと複雑な気分になる。

 このとき、ラーファンは彼の腕前に発した言葉以上の期待をしていた。

 目指すドラゴンも彼がいれば易々と倒せるのではないだろうかと──




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