英雄の天意~枝葉末節の理~
「お前が見定めていたものはなんだ」

「あなたの心、あなたの意思」

 ただ伝えただけでは、この世界を揺るがせる存在を一つ増やすだけ。

 もし、本当に彼ならば、あなたは我々の敵となるかもしれない。

「けれど、もうよいのです」

 どんなに見定めようと、あの力に対抗出来るのはあなたの他にはいない。

 全てはあなたが決断することです。

 一体、何が起こっているのかナシェリオには見当も付かず視線を泳がせて寸刻、戸惑いを見せた。

 確かめるにしても自分の考えだけでは決めかねることもあるかもしれない。

 しかし、長らく一人で旅をしていたナシェリオには誰かを連れ歩くことに躊躇いがあった。

 ましてやエスティエルの言うように、誰をも拒む凍える大地ならば連れてゆくことも出来ない。

「お前の意見が訊きたいときはどうすればいい」

「その指輪に語りかけて。心で」

 わたしはあなたと共にあります。

 紫の宝石がはめ込まれた指輪を示し、エスティエルはゆっくりと姿を消した。





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