英雄の天意~枝葉末節の理~
「英雄になりたいと願った者が惨めに冥府に墜ち、軟弱者が英雄ともてはやされる」

 なんとも不公平ではないか。

「ラーファン、私は──」

「ああ、すまない。お前を責めている訳じゃないんだ」

 ただ、この世界は理不尽でまったく優しくない。

 お前だってなりたいものがあったのに、それを阻まれた。

 こんな世界は必要がないとは思わないか?

 淡々と語るラーファンの言葉に目を丸くする。

 彼は一体、何を言っているんだ。

「お前だってそう思うだろう?」

 同意を求めて肩をすくめる。

 けれど、ナシェリオはやはり胸中に抱いた疑念を払えず、昂然(こうぜん)と玉座に腰掛ける男に視線を送る。

「おいおい、まだ疑っているのか? 俺は正真正銘、お前の友人のラーファンだよ」
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