英雄の天意~枝葉末節の理~
 今のナシェリオにならば勝てる。

 さりとて、闘わずして引き込めるならその方が楽でいい。

 心の隙間に入り込むことが出来たなら、造作もなく懐柔(かいじゅう)できるだろう。

 ずっと俺の後ろをついてきたこいつが今更、俺に刃向かえるはずがない。

 こいつは堅固(けんご)だが、傷を開く方法を俺は知っている。

「いいことを教えてやろう」

 これから話す事柄にナシェリオがどんな反応をするのかと嬉しそうに口角を吊り上げた。

「プレオイシスはどうして暴れたんだろうなあ」

「……どういう意味だ」

 下卑た笑みに顔をしかめる。

 するとラーファンは、交えた剣に力を込めてナシェリオに顔を近づけた。

「お前の両親が死んだのには裏があったのさ」

 ナシェリオは耳元で紡がれた言葉にびくりと体を強ばらせた。

 あれが仕組まれたものだったというのか。
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